最新情報 & トピックス(会員向け)

納豆事件にみる健康食品管理士の立派さ

この協会の設立動機の一つは「あるある」などのようなマスコミに踊らされずに「食の安全、安心に関する危機管理のできるリスクコミュニケーター」を養成することでありました。それが、今回の事件で見事に立証されました。そして、「健康食品管理士認定協会」で健康食品管理士と認定した人達が、本当に社会に必要な人だと言うことが改めて実感できた白いんげん豆事件に次いで、素晴らしい機会となりました。

昨年の白いんげん豆食中毒事件の時にもそうでしたが、テレビ局が食べるのをやめてくださいという以前にこの問題を学問的に理解し、周りの人に食べないことを呼びかけることができました。

今回も多くの管理士の方からは、あの放送に問題があることをいち早く感じて、報道に対する問題点を数多く協会に頂いており、今後の健康食品管理士認定協会における危機管理として貴重なデータになりつつあります。

以上のような次第ですが、そうした騒ぎのうちに、「あるあるのデータ捏造問題」が発生しました。そして、健康食品管理士の皆様は良くご存じだった私(長村)が関与した「レタスと睡眠」問題がさらに取り上げられてまた一騒ぎがおこりました。

この騒ぎでは何故今頃になって長村は事件を告発するのだ? というご意見が管理士以外の方から多く発生しているようです。そして、管理士の方から「レタスと睡眠」の問題の時間的経過をそんな人達に説明できるようにもう一度良く解説して欲しいと要求されております。そこで、その点に関しまして説明をさせていただきます。

何故、直後に放送局に抗議をしなかったか?

これは番組を見られれば一目両全ですが、番組を見た人は誰も長村の行った実験とは思っていません。確かに実際の実験は私の実験室の場面でしたが、私の顔写真も助手の顔写真も放映されておりません。しかし、放送では、実験を行ったのは小生ではなく、マスコミに人気があるT教授が行った実験として放送されました。従って、この番組を見た人は誰もがT教授が行った実験であると疑いませんでした。(添付ファイルの番組のホームページをご覧ください。PDFファイルで場面は2場面ありますからご注意)

いわば、大きなメディアと今でもNHKを初め多くのメディア受けの良いマスコミ有名教授がこの番組をつくった訳です。それをマスコミ無名の田舎教授が「あれは私がやった実験です」などと言おうものなら「やっかみからの売名行為」と報道されかねません。そして、万が一、取り上げられた場合、T教授は少なくとも学者としての生命を失います。そんな馬鹿なことにエネルギーを注ぎたくないという当時の私の考えはご理解いただけると思います。

「あるある」番組の後、T教授にあれは眠っていませんでしたよ、と教えてあげようかと考えた瞬間もありました。それは、事実、眠っていなかった訳ですからT教授は結果として「あるあるのやった捏造」に荷担したことになるので気の毒だと考えたからです。しかし、人のやった実験をその真偽も確かめもせず堂々としゃべるような人を助ける必要もないと考えて放置しておきました。

このような経過で、私が番組に直接抗議をする必要がなかったことはおわかりいただけると思います。そして、この直後から多くのTV出演によりT教授は「レタスと睡眠」の有名な教授となられました。

以上、こうしたマスコミ有名教授の無責任さと番組制作者のいい加減さで番組を支えている構造には抗議をするのもばからしかった。従って「あほらしくて抗議をする気にもならなかった」というテレビ会見の時の言葉になった次第です。

それなら何故、遅まきでも学会や市民講座でこの問題を暴露したか?

「所さんの目がテン」の番組取材を契機に、分かったことですが、T教授があちこちへTV出演し、それに伴ってインターネットによる間違った化学名が広まっている状況を見て、改めてこれは抗議をしなければならないと感じました。それは誤った化学名が自分のかかわったことで日本に流布されている現状は科学者、研究者の良心として許されないとの気持ちからです。

それならば、その良心に従って遅まきでもマスコミに訴えるべきではないか?とお考えになるかもしれません。しかし、そのためにマスコミを使うことが無理だと言うことは私の確信をするところでありました。何故かと言えば「所さんの目がテン」の取材者がこの問題を「全く問題としてとらえていない」ことが明らかだったからです。まして、ラクッコピコリンとラクチュコピクリンの化学名の違いを正すための番組を制作するなどということは考えられませんでした。

奇しくもこの私の“感“は見事に当たりました。今回、取材をされたすべての局と新聞社にこの問題の重要性をお知らせしたにもかかわらず、かけらも報道されなかったからです。健康食品管理士の方だったら、重大な誤りと感じられる内容が彼らには全くたいした問題ではないのです。

これが外人から見たらいかに馬鹿げた事であるかは、イギリス在住の日本人の方の次のネット上の次の記事をお読みいただけばおわかりになります。

従いまして、その後は、健康食品管理士の皆様は良くご存知のように、私は市民講座、学会の特別講演、教育講演を初め、シンポジウム、フォーラム等と非常に多くの機会にこの問題を発信し続けてきました。健康食品管理士の皆様を含めてざっと2万人位この話を聞いた方がおられます。そこにはメディアの記者ももちろん何人かおられました。

それなのにワイドショウで「長村先生はどうしていまごろ告発したんでしょうね、もっと早ければこんな事にならなかったのに」と論じられていたそうです。開いた口がふさがりません。

昨年から日経BPに「多幸之介の斬る食の問題」という月1回の連載記事が依頼され、そこに、先日ラクッコピコリンとラクチュコピクリンの記事を掲載いたしました。そうしましたら、さすがこの日経BPの読者のレベルは高く、問題視され、どなたかが毎日新聞にお知らせになったようです。

そこで、この騒ぎが発生いたしました。しかし、マスコミの体質は相変わらずでした。この重要な問題を「あるあるたたきに使える」という浅ましい考えで、そのためだけに使われました。その結果どうして今まで放っておいた、時流に乗ろうとした売名行為だ、と「長村パッシング」が発生してしまいました。

この経過も私の専門とする危機管理のうちの、情報の危機管理として大変面白いテーマとなりますので研究材料にしようと企んでおります。

危機管理の課題として大切なことの一つは、再び同じ過ちをしないということですが、マスコミの方々はそこが全く分かっていないようです。この騒ぎがなぜ起こったのか、というこの本質に対する質問が取材にきたすべての局からありました。それに対して私は「マスコミの姿勢の問題とそこに迎合する研究者の存在の問題」を指摘して例を挙げ、一部の局にはかなり詳しく回答いたしました。

しかし、どの局も全く取り上げませんでした。そして、ニュース番組では訳の分からない方々が、どうしたら防げるかとか、どうしてもっと早く告発してくれなかったんだろうなどと論じている次第です。

こんな状態ですから、まだまだマスコミは似たような事件を引き起こすと考えられます。皆様からの情報とこちらから発信する情報とで成立する健康食品管理士認定協会を宜しくお願いいたします。